Yohimura Lab. (Kagawa Univ.)

吉村 研究室

加工(モノづくり)分野の研究室

香川大学 創造工学部 造形・メディアデザインコース『吉村研究室』の公式サイトです.
加工,特に塑性加工に関する分野で実験的,シミュレーション的に研究を行っています.

成形限界予測の研究

塑性加工においては,過度のひずみを加えると割れなどの破壊が生じる.変形解析シミュレーションにおいて,予測式を導入すれば,加工中の欠陥を予測することができることになる.板材ではくびれ発生の成形限界と破断の成形限界があり,これらを予測する式を開発する.

板材の2軸変形における成形限界予測

金属板材の2軸変形において,くびれ発生限界の予測式を開発する.

塑性変形はせん断変形によって生じるものである.例えば,等方性材料の場合,主応力軸空間の正八面体上のせん断応力の大きさがミーゼス応力,垂直応力が静水圧応力となる.正八面体上のせん断応力のベクトルは正八面体の4対の面で向きが異なっている.本研究では,ミーゼス応力というスカラー量で考えるのではなく,正八面体上の各面のせん断応力がお互いに作用し,これが成形限界に影響すると考える.

提案する主せん断ひずみエネルギーを用いたくびれ発生の成形限界予測式 A τ12dγ12 + B τ23dγ23 + C τ31dγ31 =1
ここで,
τij:主せん断応力(i,j=1,2,3は主応力方向)
ij:主せん断ひずみ増分
A=B=C=1のとき,左辺は相当ひずみエネルギーと等しい.

板材の平頭張出し試験による2軸引張試験を行い,等2軸,単軸,平面ひずみの3パターンの比例ひずみ経路を用いて材料定数A,B,Cを求め,それ以外の比例ひずみ経路でのくびれ発生の成形限界値を予測したが,かなりの精度で予測できていることが分かった.大矢根の延性破壊条件式ではパラメータが2個ということもあるが,ほとんど予測できていない.

Comparision between experimantal and analytical flow limit of A1050 sheet by biaxial deformation
図 純アルミA1050板材の2軸引張試験における実験と予測式の成形限界の比較

さらに,得られた材料定数を使用し,途中まで比例経路の予ひずみ(1次経路)を加え,その後幾つか他の比例経路に変化させたひずみ(2次経路)を加えた場合の成形限界を予測した.5.6%,15%,22%の等2軸引張ひずみ経路の後2次経路に移行したもの,板厚方向に圧縮した後2次経路に移行したものを実験と比較したところ,かなりの精度で予測ができた.

prediction of flow limit of A1050 sheet in non-linear biaxial strain path(pattern 1)  prediction of flow limit of A1050 sheet in non-linear biaxial strain path(pattern 2)
prediction of flow limit of A1050 sheet in non-linear biaxial strain path(pattern 3)  prediction of flow limit of A1050 sheet in non-linear biaxial strain path(pattern 4)
図 比例ひずみ経路でのくびれ発生で近似した定数(A,B,C)を用いて,非比例ひずみ経路の実験と予測値の比較をした結果

金属板材の2軸変形において,延性破壊限界の予測式を開発する.

転位(線状欠陥)が絡み合い,一様変形が保てない状態に至るボイド(空孔欠陥)発生(くびれ発生)後は,ボイドが成長し,ボイド同士が連結し合って最終的に破断に至る.延性破壊予測は破断時を予測するものであるが,引張の静水圧応力下でひずみが増大した結果破断するとした大矢根の延性破壊条件式などが用いられる.しかし,極狭なくびれ部のひずみ分布測定が困難でもあり,まだまだこの分野は発展途上にある.小坂田により,ボイドの成長においては,ボイド間でせん断応力が集中し,それが極値を取る時点を破断限界とするせん断集中理論が提案されている.ボイド成長においても周囲のせん断変形により欠陥が導入されることから,この考えは妥当と考えられる.小坂田は2次元で提案しているが,3次元の応力状態を考慮するため,静水圧応力による気孔率変化(密度変化)を加味して3次元に理論を拡張し,次式のような破断限界ひずみεcriticalを提案する.
提案する3次元化されたせん断集中理論による延性破断の成形限界予測式 εcritical=(nFρ2k-1gσm(k+E'2Eρ))11-n

ここで, ρは相対密度,
σmは静水圧応力,
k,gは大矢根の多孔質体の相当応力の式 σ eq = 1 ρk 12 { (σ1-σ2)2 + (σ2-σ3)2 + (σ3-σ1)2 } + (σmf)2 に含まれる材料定数,
F,nはn乗硬化則 σeq=nに含まれる材料定数,
E,E'はかなり複雑なので省略(ただし,Eを定数とすると小坂田の2次元の式と同じになる.) 宅田らによるAl合金の破断限界の実験結果とこのせん断集中理論との比較を行ったが,純アルミA1100,アルミ合金A5182において比較的一致している.多少単軸から等2軸引張に向かっての傾きが実験の方が急であるが,大矢根の多孔質体の相当応力の式は相対密度ρ≧0.6とされており,これが誤差の要因になったと考えられる.

prediction of fracture limit of A1100 sheet in linear biaxial strain path 
図 せん断集中理論による平頭張出試験(2軸引張)の延性破壊(破断)予測と実験との比較

吉村研HPへ戻る